転勤を伝えたあと、同じ質問が何度も来て、どう答えればいいか分からなくなっていませんか。「なんで引っ越すの?」「どうしても行くの?」と、夜になると布団の中で聞かれる場面です。
結論から言うと、伝えてから引越し当日までの数週間は、立派な声かけよりもお別れの予定・いつも通りの生活・ぶれない答えの3つが子どもの不安を小さくします。この記事は、その期間にやることを時系列で整理しました。5回の転勤で引っ越してきた立場から、「伝えたあと」だけに絞って書いています。
伝え方そのものは転勤を子どもにどう伝えるかの記事に任せます。読み終わるころには、残りの日数をカレンダーに落とし込めるはずです。

引越し当日までの数週間は、4つの週に分けて考える
内示から引越しまでの長さは、会社や時期によって違います。実態は転勤の内示は何日前に来るのかの記事にまとめました。下の表は残りが4週間ある場合の一例で、2週間しかないなら週1と週2、週3と週4をそれぞれまとめて進めます。
| 時期 | 子どもに向けてやること | 並行する親の実務 |
|---|---|---|
| 週1(伝えた直後) | 質問に付き合い、説得はしない。お別れしたい相手と行きたい場所を、子どもに挙げてもらう | 引越し日と新居の候補を確認する。学校へ連絡する日を決める |
| 週2 | 最初のお別れの予定を入れる。最終登校日と学校行事を担任に確認する | 荷造りは子ども部屋と遊び道具を後回しにして、納戸や季節外れの物から始める |
| 週3 | お別れの予定を消化する。持っていくものを子ども自身に選んでもらう | 転出の手続きを進める(流れは転校の手続きの記事) |
| 週4(最終週) | いつも通りの生活を優先する。前日と当日の過ごし方を決める | 荷造りの仕上げと、当日の段取りの最終確認 |
どの週も、子どもに向ける時間を先に確保して、実務はその残りで回します。順番を逆にすると、荷造りが終わるころには、お別れの時間が残っていません。
お別れの時間は、荷造りより先に予定表へ入れる

残りの日数は、荷造りと手続きにどんどん食われます。お別れの予定は「時間ができたら」ではなく、荷造りの予定より先にカレンダーへ書き込んでください。
進め方は4つです。
- 子どもに「会いたい人」「行きたい場所」「最後にやりたいこと」を3つずつ挙げてもらい、メモに残す。上限を決めておくと、全部は無理でも実現できます
- 友だちの保護者に連絡して、日付を先に押さえる。平日の夕方と週末をすべて埋めるのは難しいので、週1〜2枠から始める
- 担任に最終登校日を確認し、お別れの場を学校でつくれるかを相談する。お別れ会を開くかどうかは学校の判断なので、「お願い」ではなく「相談」の形で切り出す
- 引越し前日には友だちとの予定を入れない。前日は作業で予定が崩れやすいので、お別れは前々日までに終えておく
子どもが「会いたくない」「何もしたくない」と言う日もあります。そのときは、手紙や写真で代わりにして、無理に会わせないでください。引越し後に連絡を続ける方法は友達と離れたくないと泣く子への対応の記事に、「別れを終わりにしない5つの工夫」としてまとめてあります。
持っていくもの・変えないものは、子ども自身に決めてもらう
引越しの準備は、ほとんどが親の決めたことを子どもが聞かされる時間です。1つでも子どもが決める場面をつくると、聞かされるだけの時間が減ります。決めてもらうのは、次の3つです。
- 引越し当日に自分で持つバッグの中身(ぬいぐるみ、いつもの本、水筒など)。親は詰めずに、本人に詰めてもらう
- 最後に梱包するもの。寝具、いつものコップ、毎晩の絵本は、前夜まで荷造りしない
- 新居の自分の場所。間取り図や写真を見ながら、机やベッドを置きたい位置を子どもに決めてもらう
もう1つは、変えないものを意識して残すことです。寝る時刻と寝る前の習慣、休日の朝ごはん、習い事の最終日は、荷造りの週でもいつも通りにしておきます。段ボールだらけの部屋でも、夜の10分が普段どおりなら、「いつもの家」が続いている感覚が残ります。
新居で最初の夜に使うもの(パジャマ、タオル、歯ブラシ、いつもの寝具)は、別の箱にまとめて、引越し当日の最後にトラックへ載せるか、車に積んでください。到着した夜に段ボールを探し回ると、親にも子どもにも余裕がなくなります。
「なんで引っ越すの?」が何度来ても、同じ答えを同じ言い方で返す

同じ質問が何度も来るのは、答えが足りないからとは限りません。答えが変わらないことを、毎回たしかめているのかもしれません。だから親は、毎回答えを工夫するのではなく、短い答えを1つ決めて、家族全員で同じ言い方を使うほうが効きます。
答えの型は3つの順番です。
- 決まった事実を短く言う(「パパの会社の決まりで、○月に引っ越すことになった。これは変えられない」)
- 気持ちを受け止める(「悲しいし、嫌だよね」)
- 子どもが決められることを1つ渡す(「お別れの日に何をするか、一緒に決めよう」)
もう1つ気をつけたいのは、親にも分からないことを約束しないことです。「またすぐ戻ってこられるよ」「次は長くいられるよ」は、次の辞令を親が知らない以上、約束できません。代わりに言えるのは、「会いに行く日を決めよう」「手紙やビデオ通話の約束をつくろう」といった、親が実行できることです。
夜の布団の中で聞かれたときは、短く答えて、「今の質問、どんな気持ちで聞いたのか教えて」と1回だけ返します。話が長くなりそうなら、「続きは明日の朝ごはんのときに聞くね」と切り上げて構いません。言ってはいけない言葉はNGワードの記事に、「転校したくない」と言われたときの実際のやりとりはわが家の記事に書きました。
引越し前に気にかけたい子どもの変化は6つ

文部科学省の保護者向けリーフレットは、子どもが環境の変化などでストレスを抱えると、多くの場合、心身にサインが出ると説明しています。引越し前の数週間で、特に気にかけたいのは次の6つです。
- 眠れない、寝つきが悪い
- 食欲がない、または食べすぎる
- 親のそばから離れない、強い甘えが出る
- 夜尿が始まる、または増える
- 学校や友だちのことを話したがらない
- ささいなことで泣く、元気がない
同じリーフレットは、テストや行事のような一時的なストレスなら、注意して見守るだけで足りることがあるとしています。一方で、ストレスが強い場合や長く続く場合は、心のケアが必要になるとも書いています。数日で消えるか、日ごとに強くなるかが、見分けの手がかりです。
もう1つ、リーフレットは、子どもが家庭と学校で異なる様子を見せることがあると指摘しています。家で気になる変化があれば、学校での様子を担任に聞いてみてください。出典: 文部科学省「子供の心のケアのために(保護者用)」、文部科学省「学校における子供の心のケア-サインを見逃さないために-」
伝えた直後の1週間の見守り方は転勤を子どもにどう伝えるかの記事に、引越し後に馴染めているかを見る目安は転校で子どもが馴染めていないサイン7つの記事にあります。この記事では、引越し前の変化だけを扱います。
親のあわただしさと不安は、荷造りの合間に子どもへ伝わる

文部科学省の保護者向けリーフレットは、子どもが安心して過ごせる家庭生活には、保護者自身の気持ちが安定していることが大切だと書いています。引越し前の親は、手続き、見積もり、職場の引き継ぎと、用事が一気に増えます。余裕がなくなるのは自然なことです。
だからこそ、子どもの前でやることと、やらないことを分けておきます。
- 手続きの電話や、夫婦の段取りの相談は、子どもが寝てからにする
- 「大変」「もう無理」と言う代わりに、「今日はここまで終わった」と進み具合を口にする
- 転勤する親のせいにする言い方を、家族の誰もしない
親の負担を減らす近道は、実務を早く片づけることです。引越し業者の比較や手続きの順番は、転勤辞令が出たら最初にすることの記事にまとめてあります。実務が早く終わるほど、子どもに向ける時間が残ります。
親自身の不安が強いときは、1人で抱え込まないでください。リーフレットは、地域の保健所や精神保健センターの電話相談・面接相談を、病院に行く前に気軽に使える窓口として挙げています。出典: 文部科学省「子供の心のケアのために(保護者用)」
今の学校のスクールカウンセラーに相談していいのは、こんなとき

引越し前でも、今の学校のスクールカウンセラーに相談して構いません。文部科学省の資料では、スクールカウンセラーの役割は、児童生徒へのカウンセリングに加えて、教師や保護者への助言・援助とされています。保護者のリーフレットにも、子どもの様子が気になるときは学校に相談し、来校しているスクールカウンセラーも利用できると書かれています。
相談を考えてよい目安は、次の3つです。
- 眠れない、食欲が落ちる、学校を嫌がるといった変化が、数日たっても消えない
- 変化が日ごとに強くなっている
- 「自分のせいだ」など、自分を責める言葉が出ている
ただし、スクールカウンセラーはいつも学校にいるわけではありません。文部科学省の令和8年度の予算資料では、基礎配置は全公立小中学校で週4時間とされています。まず担任か教育相談担当の先生に「スクールカウンセラーに相談したい」と伝えて、来校日と予約の取り方を聞いてください。
子ども本人が夜や休日に話したくなったときは、文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」(0120-0-78310)があります。子どもだけでなく保護者も使える窓口です。出典: 文部科学省「スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーによる教育相談体制の充実」、文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」、同「子供の心のケアのために(保護者用)」
発達支援や療育を受けているご家庭は、引越しで支援が途切れないように、転居で支援が切れないようにする段取りもあわせてどうぞ。転校先へどこまで伝えるかは、今の担任と相談して決めると進めやすくなります。
引越し前日と当日は、子どもの居場所と役割を先に決めておく

当日は親の手が離せなくなります。子どもが放っておかれる時間が出ないように、前日までに2つだけ決めておきます。
- 作業中にいる場所。家にいるのか、親族や知人の家に預けるのかは、子どもの希望を聞いて決める
- 当日の役割。自分のバッグを持つ、家の最後の写真を撮るなど、子どもにしかできない役を渡す
玄関を出る前に、「この家でいちばん好きだった場所はどこ?」と1回だけ聞いてみてください。答えは写真に残せます。当日の食事は、新しい土地の名物ではなく、いつものメニューに寄せるのも一案です。
引越しが終わったら、読む記事はこちら
この記事は、伝えてから引越し当日までをつなぐ役目です。引越し後と、その前の準備は、次の記事に分けて書いています。
- 転校初日の流れと持ち物:初日の朝に何を持たせ、どう送り出すか
- 転校で友達ができないときの対応:友だちができるまでの目安と、親ができること
- 転校で子どもが馴染めていないサイン7つ:引越し後の様子の見方と、相談のタイミング
- 転勤族の小学校選びの完全ガイド:学区の調べ方と、学校を選ぶときのチェックリスト
- 転勤を子どもにどう伝えるか:年齢別の伝え方と、言ってはいけない言葉
まとめ|伝えたあとの数週間は、お別れ・日常・答えの3つで守る
伝えた日に不安が消えることはありません。お別れの予定を先に入れ、いつも通りの生活を残し、同じ質問に同じ答えを返す。この3つを引越し当日まで続けるだけで、子どもの不安は小さくなります。親が疲れたときは、スクールカウンセラーや保健所に頼って構いません。
参考・根拠資料
- 文部科学省「子供の心のケアのために(保護者用)」
- 文部科学省「学校における子供の心のケア-サインを見逃さないために-」
- 文部科学省「スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーによる教育相談体制の充実」
- 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」


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