転勤辞令で退職する前に|悩む人7割・辞めた人3割を分ける5つの確認

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転職・キャリア

「転勤、決まったよ」
その一言を聞いた瞬間から、頭の中で電卓と地図と子どもの顔が同時に回りはじめる。辞めるべきか、ついていくべきか、単身赴任にするか。答えが出ないまま、朝のコーヒーだけが冷めていく。

転勤の辞令をきっかけに「退職を考える」人は69%います。ところが、実際に辞めた人は31%。この4割近い差は、我慢の量の差ではありません。辞める以外の選択肢を、辞令が出る前に知っていたかどうかの差です。

この記事では、公的な調査データをもとに、退職を決める前に確認してほしい5つを順番に並べます。読み終えるころには、「辞める・辞めない」の二択から抜け出せているはずです。

コロン
 

ボクもこれまでに5回、転勤を経験してきました。辞令を見るたびに「また環境が変わるのか」という不安と、「家族にどう伝えよう」という迷いが同時に来ます。だから、この数字は大げさだと思いません。

転勤で退職を考える人は7割。実際に辞めたのは3割

転勤の辞令を受け取り、退職を考える人のイメージ

エン・ジャパンが2024年に実施した調査では、「転勤は退職のキッカケになる」と答えた人が69%にのぼりました。一方で、実際に転勤を理由に退職した人は31%です。

つまり、悩んだ人の半分以上は辞めずに済ませています。ここが出発点です。

項目 2024年調査 2025年調査
調査時期 2024年4月8日〜16日 2025年6月2日〜30日
有効回答数 1,039名 2,303名
退職のきっかけになる/考えた 69% 44%(うち実際に退職12%)
20代 78% 69%
30代 75% 61%
40代以上 64% 40%
男性 62% 43%
女性 75% 50%
出典:エン株式会社「『転勤』に関する意識調査(2024)」(『エンゲージ』ユーザー1,039名)/「『転勤』に関する調査」(2025年・『エン転職』ユーザー2,303名)。2つの調査は対象者と設問が異なるため、数値の単純比較はできません。

2つの調査で数字の水準は違います。2024年は「退職のキッカケになると思うか」、2025年は「実際に考えたことがあるか」を聞いているからです。

それでも、傾向は2年とも変わりませんでした。若い世代ほど、そして女性ほど、転勤で仕事を手放す方向に傾く。2025年調査では「今後、転勤の辞令が出たら退職を検討するか」に対し、男性52%に対して女性は65%が検討すると答えています。

辞めたい理由の1位は、自分の仕事ではなく「配偶者の転居」

共働き夫婦が転勤について話し合う様子

同じ2024年調査で、転勤を拒否したい理由のトップは「配偶者の転居が難しいから」でした。40%です。自分の仕事のやりがいでも、給料でもありません。

順位 転勤を拒否したい理由 割合
1位 配偶者の転居が難しい 40%
2位 持ち家がある 34%
3位 子育てがしづらい 29%
4位 親の介護 28%
出典:エン株式会社「『転勤』に関する意識調査(2024)」

上位4つを並べると、あることに気づきます。どれも、辞令を受け取った本人ひとりでは決められない項目です。

だから「自分が辞めるかどうか」だけを考えても、答えは出ません。実際に決まるのは、配偶者の仕事・住まい・子どもの学校・親の状況を並べたあとです。配偶者のキャリアをどう守るかは転勤族の妻がキャリアを守る5つの方法で詳しくまとめています。

あの朝のコーヒー、最後まで飲めなかったな。辞令って、なんでこんなに唐突に来るんだろう。

退職を決める前に確認する5つ

転勤の辞令が出たあとに確認する項目を書き出す様子

辞めた3割と、辞めずに済ませた4割。分かれ目になるのは、次の5つを確認したかどうかです。順番にも意味があります。上から見ていくと、後戻りできない決断を最後に回せます。

確認する順番 見るところ 期限の目安
① 会社の制度 地域限定社員・転勤免除の申請窓口・手当の上限 内示から1週間
② 断れる余地 就業規則の記載と、配慮を求められる事情の有無 内示から1週間
③ 住まい 持ち家を売る・貸す・空き家にするの3択 内示から2週間
④ 子どもの学校 学年・受験の時期・転校のタイミング 内示から2週間
⑤ 配偶者の仕事 続ける・辞める・働き方を変えるの3択 ①〜④のあと
期限の目安は、内示から着任まで1〜2か月というよくあるスケジュールを前提にした筆者の整理です。会社によって異なります。

① 会社の制度は「使えるか」ではなく「いくらまで出るか」で見る

まず調べるのは、地域限定社員の制度があるか、転勤免除の申請窓口があるか、そして手当がいくらまで出るかです。

ここに交渉の余地があります。2024年調査では、転勤を承諾する条件のトップが「家賃補助や手当が出ること」で72%でした。裏を返せば、条件しだいで承諾に傾く人が7割いるということです。あなたが会社に伝えるべきなのは「行けません」ではなく「この条件なら行けます」かもしれません。

引越し費用も同じです。会社の補助には上限があり、超えた分は自己負担になります。差額を減らすには、同じ条件で複数社から見積もりを取るのが確実です。

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② 断れるかどうかは、就業規則の1行で決まる

就業規則に「業務の都合により転勤を命じることがある」と書かれていれば、原則として転勤命令は有効です。ただし、原則には例外があります。介護や治療など、動けない事情がある場合は配慮を求められます。

断り方と、断ったあとに何が起きるかは転勤を断るとどうなる?拒否できるケース・交渉の仕方にまとめました。

③ 持ち家は「売る・貸す・空き家」を数字で比べる

拒否したい理由の2位が持ち家(34%)でした。住宅ローンを払いながら赴任先の家賃も払う二重生活は、家計を確実に圧迫します。

判断の基準は転勤族のマイホーム問題|売る・貸す・空き家の判断基準で整理しています。単身赴任か家族帯同かで迷っているなら、単身赴任か?家族帯同か?後悔しない判断のポイントが先です。

④ 子どもの学校は、学年で答えが変わる

3位が子育て(29%)でした。同じ転校でも、小学2年生と中学3年生ではまったく話が違います。中学生は内申点の付け方が都道府県で変わるため、受験期の転居は影響が大きくなります。

受験期に辞令が出た家庭がどう動いたかは転勤族の中学受験どうする?に、転校後の子どものケアは転校で友達ができないときの声かけにまとめています。

⑤ 配偶者の仕事は、辞める前に働き方を数えてみる

1位の項目です。そして、いちばん最後に決めるべき項目でもあります。①〜④が固まらないうちに配偶者が退職届を出すと、あとから選択肢を戻せません。

帯同するとしても、選べる道は「辞める」だけではありません。リモートで続ける、資格を取って場所を選ばない仕事に移る、派遣で赴任先ごとに登録し直す。夫の転勤で仕事を辞めますか?共働き転妻のキャリア断絶の現実で、それぞれの現実的な難易度を書きました。

日曜の新幹線って、なんでこんなに重いんだろうね。また月曜が来た、ってなる。

辞めると決めたら、失業給付の区分を先に確認する

ここは見落とされがちですが、お金に直結します。転勤がからむ退職は、自己都合として扱われないことがあります。

雇用保険には、離職理由による区分があります。ハローワークの案内では、次の2つが転勤に関係します。

区分 該当する離職理由(原文) あてはまる場面
特定受給資格者 「事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者」 勤務先そのものが移転し、通えなくなって辞めた
特定理由離職者 「配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避」 夫(妻)の転勤について行くため、自分が辞めた
出典:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

注目してほしいのは下の行です。配偶者の転勤に帯同するために辞めた場合は、正当な理由のある自己都合離職として扱われます。拒否したい理由の1位が「配偶者の転居が難しい」だったことを思い出してください。いちばん多くの人が直面する場面が、そのまま制度に書かれています。

ただし、該当するかどうかを決めるのは会社でも本人でもなく、ハローワークです。離職票の記載内容によって判断が変わります。退職の話を切り出す前に、最寄りのハローワークに事実関係を伝えて確認してください。順番を逆にすると、あとから直すのに手間がかかります。

転勤のない働き方に移るなら、辞める前に情報だけ集める

転勤のない働き方への転職を検討する様子

転勤制度そのものを見直す会社は増えています。NTTグループはテレワークを基本とし、転勤・単身赴任を原則不要とする方針を打ち出しました。東京海上日動あんしん生命は、社員が毎年「転居を伴う転勤の可否」を選べる制度を導入しています。最新の動きは「転勤廃止」の波が来ているにまとめました。

とはいえ、制度が変わるのを待っていられないのが現実です。地域限定社員の枠がある会社や、リモート中心の会社に移るという道もあります。

ひとつだけ。辞めてから探すより、辞める前に情報を集めるほうが選択肢は多く残ります。在職中なら「条件が合わなければ動かない」という判断ができるからです。エージェントの選び方と進め方は転勤族が転職を考えたときで解説しています。

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まとめ:二択で考えるほど、辞める側に寄っていく

この記事のポイントです。

  • 転勤が退職のキッカケになると答えた人は69%。実際に辞めたのは31%
  • 2024年・2025年の両調査とも、若い世代ほど、女性ほど退職に傾く傾向は変わらない
  • 拒否したい理由の1位は「配偶者の転居が難しい」で40%。本人だけでは決められない
  • 確認する順番は、会社の制度 → 断れる余地 → 住まい → 子どもの学校 → 配偶者の仕事
  • 配偶者の転勤に帯同して辞める場合、特定理由離職者にあたる可能性がある

辞令が出た日に「辞めるか、ついていくか」で考え始めると、答えは辞める側に寄っていきます。ほかの道が見えていないからです。

先に5つを並べてください。順番に潰していけば、最後に残った選択肢が、あなたの家庭にとっての答えになります。

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